レスベラトロールの抗がん作用

【レスベラトロールはフィトアレキシンの一つ】

植物は、外敵(病原菌など)や過酷な外的環境(紫外線や熱や重金属など)に打勝つために、様々な生体防御物質を合成しています。 フィトアレキシン(phytoalexin)は植物体に病原菌や寄生菌が侵入したときに植物細胞が合成する抗菌性物質(生体防御物質)のことです。すでに持っている物質を活性化することもあります。
多くの化合物が知られていますが、レスベラトロール(Resveratrol)もフィトアレキシンの一つです。 レスベラトロールはスチルベン合成酵素によって合成されるポリフェノールの一種です。 気候変動やオゾン、日光、重金属、病原菌による感染などによる環境ストレスに反応して合成されます。
赤ぶどうの果皮や赤ワインに多く含まれています。 その他、ラズベリー、ブルーベリー、マルベリー (桑の実)、イタドリなどにも含まれます。(下図)


【レスベラトロールの寿命延長作用】

レスベラトロールはその健康作用が注目され、特に抗老化のサプリメントとして人気があります。 例えば、マウスを使った実験でレスベラトロールが寿命を延ばす効果があることが報告されています。マウスに高脂肪・高カロリー食を与えると寿命が短くなります。このときレスベラトロールを摂取させると寿命の短縮が防げるという報告です。
カロリー制限が寿命を延ばすことが明らかになっていますが、食物不足(飢餓状態)の時に活性化される遺伝子にサーチュイン(サーチュインファミリー)というNAD依存性脱アセチル化酵素群があります。 サーチュインは長寿に関連する遺伝子で、いわゆる長寿関連遺伝子と呼ばれています。そしてレスベラトロールはサーチュイン遺伝子を活性化する作用が確認されています。
すなわち、レスベラトロールはサーチュイン遺伝子を活性化することによって、カロリー制限と同じ効果を及ぼし、寿命延長効果を発揮するということです。 カロリー過剰な食事は寿命を縮めるのですが、レスベラトロールを摂取すると高カロリーな食事による寿命短縮作用が防げるという話です。そのため、レスベラトロールは、長生きポリフェノールとして、非常に注目されるようになったのです。(下図)。

図:レスベラトロールは、カロリー制限や運動と同様にサーチュイン遺伝子を活性化する機序で、ミトコンドリア機能を亢進し、ストレス抵抗性を高め、抗老化とがん予防の効果を発揮する。

【レスベラトロールの抗がん作用】

レスベラトロールの発がん予防効果や抗がん作用を有することは1997年頃から報告されるようになりました。はじめは、マウスの発がん実験でレスベラトロールが発がん物質によるがんの発生を抑制することが報告されました。その後、多くの基礎研究で、レスベラトロールは多彩な抗がん作用を示すことが報告されています。
その作用メカニズムは極めて多彩で、以下のような報告があります。

1)抗酸化作用:活性酸素やフリーラジカルの消去
2)抗炎症作用:シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)の発現抑制
3)細胞周期関連遺伝子(サイクリン、p53,Rb,p21など)の発現や活性の調節
4)細胞内シグナル伝達系や転写因子(NF-KB、AP-1など)への作用
5)アポトーシス関連遺伝子(Bax,Bak, Bcl-2, Bcl-Xなど)の調節
6)血管新生や浸潤・転移の抑制:血管内皮細胞増殖因子やメタロプロテイナーゼの阻害など
7)AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)の活性化:インスリン感受性の改善、がん予防効果

カロリー制限と同じ効果を発揮する薬として糖尿病治療薬のメトホルミンがあります。 メトホルミンはAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を活性化し、インスリン感受性を高めて糖代謝を改善しますが、AMPKの活性化は抗がん作用があります。
メトホルミンとレスベラトロールの組み合わせは、さらに寿命を延長させるという報告があります。
カロリー制限は寿命の延長だけでなく、がんの発生や再発予防にも有効です。したがって、メトホルミンとレスベラトロールの組み合わせは、がんの発生や再発予防や進行がの治療にも相乗効果が期待できます。メトホルミン自体に直接的な抗がん作用が多く報告されています。