1。保険診療とは?

1961年に「国民皆保険制度」が施行され、貧富の差がなく全ての国民が平等な医療が受けられる様になりました。これは診療に対する医師への報酬額が決められており、患者さんはそれぞれ加入している保険(国民保険、社会保険など)から何割かの負担額を支払うというものです。この為、保険診療を受ける限り、どこの病院や診療所に行っても同じ金額で同じ診療を受けられるという「安心」があり、経済的負担が少ないため気軽に医療を受けられる様になりました。

しかし保険診療には「保険が利く範囲」があり、病気ごとに検査内容や使用できる薬などが決まっています。自由競争の規制、政府の医療への干渉、それによる医療の質の低下、患者の選択の自由の制限などの弊害もあります。診療報酬の組み立てが「出来高払い」であるため、「薬漬け」や「不用な検査」を行う医者ほど収入が上がり、良心的で診断の正しい医師は淘汰されるという傾向もあります。

カゼや胃腸炎のように治りやすい病気や、確実に治る治療法が確立されている場合には、保険診療は非常に恩恵のある診療と言えます。しかし、通常の医療(西洋医学)で治らないような病気に対しては、診療内容に大きな制約が加えられている保険診療は、必ずしも最良の医療が受けられるとは限りません。

2)自由(自費)診療とは?

「保険が効かない」ものが自由(自費)診療です。例えば、美容整形は病気の治療ではないので、保険では認められません。歯科での歯の詰め物は、保険で認められているものより良い材質のものを使う場合も自費になります。保険診療では必要最低限の診療を受ける権利のようなもので、人より良い医療を受ける事は制限されているのです。

漢方治療の多くは保険で行えますが、病名ごとに使える漢方薬が保険診療では制限されているため、各個人の体質や病気の状態に合わせたきめの細かい診療を行なおうとすると保険診療は馴染みません。そのため漢方診療を専門に行っている所は自費診療が多くなっています。

日本で未認可の医薬品や、保険適応疾患以外の医薬品の使用も、自由診療なら可能になります。

3。どっちにするか

保険で使える診療は保険診療で行い、保険で認められていない部分は自費診療で行えれば解決するのですが、これは「混合診療」といって、現時点では認められていません。混合診療を認めると、平等な医療を受ける機会を保証した皆保険制度の主旨に反するからというのが理由です。

保険診療(健康保険を使って診療を受けること)の場合には、「初診から治療の終了に至る一連の診療行為の中に、保険がきく診療行為と保険がきかない診療行為を混在させてはならない」という「混合診療の禁止」のルールがあるのです。このルールがある以上、保険がきかない部分に対して患者に自己負担を求めようとするなら「一連の診療行為」全てを自由診療、すなわち全額自己負担にしなければならないのです。

がん治療の中に、体の抵抗力や治癒力を高めるような治療があまり重視されていない理由の一つは、そのような治療法は保険診療で認められていないからです。漢方治療や健康食品などを利用して抗がん力を高めることを目標とした治療を行おうとしても、保険診療では様々な制限が加えられており、納得のいく治療はできないというジレンマが発生しているのです。

4)自費診療のメリットは何か。

医療において「コスト(費用)を抑える」「アクセス(診療機関への受診しやすさ)を保証する」「質を良くする」の3つとも同時に達成することは不可能だと言われています。我が国の国民皆保険制度は「安い費用で、平等に医療を受けられる」医療を目指しています。しかし、現実はどうでしょうか。

自己負担の金額が少ないため、ちょっとした病気や体の不調でも病院にかかるようになり、だれでも自由に病院を選べることから大病院志向になって患者が一ヶ所に集まって「3時間待ちの3分診療」と言われるほど、待ち時間が長くなってアクセスが良くなったとは決していえません。

さらに重要な事は、医師は一人当たりの診療時間が短く制限されるため、十分な診察もできず、医療の質が落ちる原因ともなっています。十分な説明や納得の行く治療満足が受けられないという患者側の不満も出てきます。今の保険制度では、一人に3分間の診察でも、1時間の診察でも診察料は同じです。時間をかけて丁寧な診察と十分な説明をしたくても、保険診療のもとでは一人の患者さんに長く時間をかけると経営困難になってしまいます。保険診療=制限診療なのです。

つまり、自由診療にすることにより、患者さんの経済的負担は多少大きくなりますが、1)十分な時間をかけて診療ができる、2)保険で認められない治療を自由に提供できる、3)患者さんの利便性が高まる、といったより質の高い、「患者中心」の医療が実践できるメリットがあるのです。