サリドマイドはがん患者の悪液質を改善する 

がん性悪液質というのは、進行がん患者において、がん組織から産生される腫瘍壊死因子α(TNF-α)などの炎症性サイトカインによって、体重の減少や食欲低下が起こる病態です。進行がんや末期がんの患者でも、この悪液質を改善することができれば、延命につながると考えられています。

サリドマイドはがん組織からのTNF-αの産生を抑制して、がん性悪液質を改善することは以前から知られています。「Gut」という医学専門雑誌の2005年4月号(54:p540-545)には、ランダム化試験において、膵癌患者の悪液質に対するサリドマイドの有効性を示すランダム化試験の結果が報告されています。

英国サザンプトン総合病院で実施されたこの二重盲検試験では、体重が10%以上減少した進行膵癌患者50例を対象とし、サリドマイド 200mgの1日1回投与またはプラセボ(偽薬)投与のいずれかの群に被験者を無作為に割り付け、体重および栄養状態の変化を観察しています。

4週後の時点で、サリドマイド投与を受けた患者は体重が平均0.37kg、腕の筋肉の体積が平均1.0cm3増加しましたが、プラセボ群の患者は体重が平均2.21kg、腕の筋肉の体積が平均4.46cm3減少しました。

8週後の時点で、サリドマイド群では体重が0.06kg、腕の筋肉の体積が0.5cm3減少したのに対して、プラセボ群では体重が3.62kg、腕の筋肉の体積が8.4cm3減少しました。身体機能も体重増加に比例してサリドマイド投与群で改善しました。

以上の結果は、サリドマイドが進行した膵癌患者の体重減少や栄養状態の悪化を防ぐ上で有効であることを示しています。

進行した食道がん患者に対してサリドマイド(200mg/日)は体重とlean body massを増加させる効果があるという効果も報告されています。食事からのカロリー摂取が同じ状態で、10例中9例で体重が減少していましたが、サリドマイド服用2週間で1.29kgの体重増加を認め、Lean body massも同様に増加しました。サリドマイドによる悪液質の改善は2週間のサリドマイド投与でも認められました。(Aliment Pharmacol Ther. 17: 677-682, 2003)
がん性悪液質の患者72例にサリドマイド100mg/日を投与して、不眠の改善(69%)、吐き気の改善(44%)、食欲増進(63%)体調の改善(53%)が認められたという報告もあります。(Ann Oncol.10:857-859. 1999)
症状の改善や体重減少の抑制が延命につながるかどうかは、まだ明らかではありません。しかし、がん性悪液質を改善することは延命につながる可能性は十分にあります。がん性悪液質を改善する方法としてはメラトニンCOX-2阻害剤漢方薬なども有効です。

がん性悪液質に関しては以下のサイトもご参照下さい。
http://www.1kampo.com/topics-10(cachexia).html