転移した腎臓がんの治療において、サリドマイドは高用量より低用量の方が優れている 

いくつかの癌において、サリドマイドの有効性が報告されています。サリドマイドの抗がん作用は用量依存性と考えられ、一般には、副作用が耐えられないレベルになるまで、段階的に投与量を増やしていく方法が取られています。
確かに投与量が増えれば、抗腫瘍効果も高まると考えられますが、副作用が問題になってきます。
多発性骨髄腫や腎臓がんやある種の肉腫では、効く場合には1日100~200mgの量で十分な効果が得られ、効かない場合には量をいくら上げても効果は現れずに副作用だけが問題になるという考え方もあり、高用量のサリドマイド投与については疑問もあります。
転移している進行した腎臓がんに対するサリドマイド治療において、高用量より低用量の方が有益であることが報告されています。これは米国のカリフォルニア州のスタンフォード医療センターからの報告です。
この研究では、転移のある進行した腎臓がん患者14例が、低用量(200mg/day)のサリドマイドの投与を受けるグループと、800mg/dayから最高1200mg/dayまでの高用量のサリドマイド投与を受けるグループに無作為に分けられ、8週間後の治療効果を比較検討されました。
腫瘍の増大が停止したstable diseaseの効果が6例に見られ、低用量と高用量の両方のグループで見られました。平均生存期間は9ヶ月でした。低用量のサリドマイドのグループは副作用が少なく、平均生存期間は高用量グループが6ヶ月であったのに対し、低用量グループは16ヶ月でした。
以上の結果は、転移している進行した腎臓がんのサリドマイド治療においては、量を最大限に増やす方法よりも、1日200mg程度の低用量で治療する方が、副作用も少なく、かつ延命効果も高いことから、より有効な方法であることを示しています。

出典:
A lower dose of thalidomide is better than a high dose in metastatic renal cell carcinoma.
(BJU Int. 96:536-539, 2005)

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