●ウクライン(Ukrain)の薬剤情報

活性成分:
Chelidonium majus L. (クサノオウ) から抽出したアルカロイド成分と、Thiotepa(チオテパ)の結合物質。

製造会社:
Nowicky Pharma, A-1040 Vienna, Austria

成分:
1アンプル(5ml)中に、Chelidonium majus L. alkaloid - thiophosphoric acid derivative を5mg含有する。 溶媒は注射用蒸留水で pH は 3.5 〜 5.5.

適応疾患(効果の期待できる腫瘍の種類):
結腸・直腸がん、乳がん、膀胱がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮頚がん、子宮体がん、口腔がん、小細胞性肺がん、非小細胞性肺がん、頭頚部がん、精巣がん、様々な肉腫、悪性黒色腫、悪性リンパ腫など。
投与法:
UKRAINは静脈注射にて投与されます。
1分間に5mlを超えない量でゆっくりと時間をかけて投与します。UKRAINを他の薬剤と一緒に混合せず、5%ブドウ糖液や生理食塩水などに希釈してゆっくり投与します。
投与量:
●UKRAINは静脈注射の後、すみやかに腫瘍組織に集まり、免疫システムにも影響を及ぼします。
●1回の投与量は5〜20mgであり、腫瘍の大きさや増殖スピード、腫瘍の広がり、免疫力の状況によって量が決定されます。少量(5mg)投与の場合は免疫増強作用が期待でき、量を多く(10〜20mg)すると癌細胞を殺す作用が期待できます。
●通常、週2回を5週間くり返し、1〜2週間休んで、さらにくり返します。
病状によって投与スケジュールを変更することもできます。
最適な量を決めるため、最初は5mgから開始し、もし反応がみられたら、この量をくり返します。
もし反応が全くなければ、5mgづつ増量しながら最大20mgを週2回まで量を増やします。
20mgと5mgを交互に投与するような方法も有効な場合があります。(最近の研究によると、高用量と低用量の交互の投与が効果を高めることが示されています。5mgと20mgあるいは30mg、40mgを1〜2日おきに交互に投与します。5mgの投与は免疫力を高め、高用量の投与はがん細胞を死滅させる効果があります。)
●治療は腫瘍が完全に縮小し、投与後の反応(副作用)が見られなくなるまで行いますが、少なくても9回以上の投与を行います。治療がうまくいって腫瘍が消滅しても、2〜4ヵ月後にさらに6回の投与を行うことを推奨します。
併用治療:
UKRAIN治療は手術の直前や直後から開始できます。
放射線治療や抗癌剤治療と併用して使用できます。
禁忌:
●妊娠中や高熱がある時は使用はできません。
●脳腫瘍の場合は、腫瘍の腫脹による脳圧亢進のリスクに十分に注意しなければならないので、脳圧亢進に対処できる病院で入院している場合しか投与できません。
●成長期の子供への投与も十分な注意が必要です。
●副腎費皮質ホルモンや免疫抑制剤はUKRAINの免疫増強作用をさまたげるので、これらの薬剤との併用は避けることを勧めます。
●高度の悪液質を伴う末期状態の癌患者には、効果はほとんど期待できません。

妊娠・授乳:
妊娠中はUKRAINの投与はできません。胎児に対する毒性があるというデータは現時点ではありませんが、胎児に対する安全性の検証は十分ではなく、毒性の危険性は否定できません。したがって、UKRAINによる治療中あるいは治療後は、女性のみならず男性も信頼できる避妊法を実施すべきです。UKRAINが母乳中に移行するかどうかの検討は十分ではないので、UKRAIN治療中は授乳は控えるべきです。

副作用:
●UKRAINを健常な被験者に投与した場合、副作用は全く認められませんでした。
●癌患者に投与した場合の副作用は、癌細胞が死ぬときに放出される崩壊産物による反応によるものです。この反応は腫瘍が縮小し消滅すれば出現しなくなります。

●最初の注射のあと、次のような副作用が出る場合があります。
 めまい、うつ症状、不眠、ねむけ、全身倦怠感、不安感、無気力感、など。

●特に、治療の初期には、口渇(水分が欲しくなる)、尿量が多くなる、緊張、うずくような痛み、刺すような痛み、かゆみ、熱感、腫瘍部分の焼けるような痛み、激しい発汗、寒気などの症状が出現します。
治療開始初期には軽度の吐き気が起こる場合もあります。腫瘍の一時的な腫脹や硬化が起こることもあります。
これらの症状の程度は個人差がありますが、これらは治療に反応していることを意味しています。
腫瘍が縮小してくるとこれらの症状は出なくなります。
これらの症状は、癌細胞が壊れて、崩壊した細胞成分が放出されるために生じると考えられます。したがって、腫瘍が見えなくなっても、これらの症状が完全に消えるまで治療を続けることが推奨されます。

安全に使用するための注意:
●健常者に5 - 50 mg を投与する第1相試験(安全性の確認試験)では、副作用を示す症状は何も認められませんでした。
●大きな腫瘍がある患者に投与した場合には、癌組織が崩壊することによる間接的な中毒症状(かゆみ、発疹など)が出る可能性があります。
●腎臓機能に障害がある患者には慎重に投与し、投与の間隔を通常よりも長くします。
●脳腫瘍に投与する場合は、脳圧亢進による危険性や意識レベルの低下に注意が必要でありますが、それ以外では副作用の警戒は必要ありません。
●治療中および治療後の喫煙や飲酒は禁止すべきです。健康的な食事を行い、ビタミンやミネラルが不足しないようなサプリメントの使用は、治療効果を高めます。
●アドレナリンの過剰分泌はUKRAIN治療の効果を減弱するので、精神的および肉体的ストレスは避けるように心掛けます。可能であれば、治療の初期には仕事から離れるのが好ましいと言えます。
●注意力や反応時間が低下する可能性があるので、機械や車の運転など集中力が必要な作業は行わない方が良いと言えます。
●小児における成長や発育に対する障害は原則として認めませんが、小児に対する投与は適応を十分に考慮すべきです。
●手術前にUKRAINを投与すると、腫瘍の縮小によって手術の成功率が高まります。手術後もUKRAINを投与することによって再発を防止する効果が期待できます。

相互作用:
UKRAINは他の薬剤の効果に影響(増強や減弱)する可能性があります。
イオウを含む薬剤に影響し、糖尿病治療薬であるスルフォニル尿素(sulfonyl-urea-derivates)の効果を増強して低血糖や失神の原因になる可能性があります。ジギタリスの効果を増強して重篤な心電図変化をきたす可能性があります。抗菌剤などに使われるスルフォンアミド(sulphonamides)の効果を減弱させます。動物実験では、モルヒネの効果を減弱させることが示されています。
以上の点から、スルフォニル尿素、ジギタリス、スルフォンアミドを服用している場合にはUKRAINの使用はできません。
モルヒネの使用中は、その鎮痛効果が弱くなる可能性を考慮しておく必要があります。

薬剤耐性:
現時点では、癌細胞がUKRAINに対して耐性(抗腫瘍効果を弱くすること)を獲得する事実は得られていません。

保存:
25 。C以下の暗所にて保存します。日光や電気の光に曝さないように注意し、通常は外箱の中に保存します。低温で保存すると沈澱が生じることがあり、その場合は注意深く60 ℃以下で温めてシェイクすることによって沈澱を溶解させます。使用期間は製造後48ヵ月です。

効果について:
●UKRAINは 癌細胞に毒性を示し、免疫機能を調節する効果を有します。
●培養細胞を用いた研究では、UKRAINは様々な種類の癌細胞に対して、アポトーシス(細胞死)を誘導したり、DNAやRNAや蛋白質の合成を阻害することによって、直接的に癌細胞の増殖を抑えたり、癌細胞を殺す作用を示しています。UKRAINはトポイソメラーゼIやIIを阻害したり、デオキシリボヌクレアーゼの活性化などによってアポトーシスを誘導する酵素に影響します。
●UKRAINは正常細胞や癌細胞の酸素消費において異なった影響を及ぼします。正常細胞と癌細胞の酸素消費は最初は増加しますが、正常細胞の酸素消費はしばらくして正常に戻り、癌細胞の酸素消費は完全に止まってしまいます。
●米国国立がんセンター (National Cancer Institute, Bethesda, Maryland USA) において、UKRAINは8種類の主な癌種(脳、卵巣、大腸、腎臓、肺、メラノーマ、白血病、リンパ腫)の60種類の癌細胞株の全てに対して、約4μg/mlの有効濃度において抗腫瘍効果を示しました。
●発がん物質のDMBAで発生させたマウスの乳がんに対して、UKRAINは治療効果を示しました。
●UKRAINは腫瘍組織に親和性が強く、UKRAINを投与後短時間で、UKRAINが腫瘍組織に蓄積しているのが検出できます。(UKRAINは蛍光を発するので、紫外線を当てれば、腫瘍の部分に蛍光が見られることでUKRAINの集積がわかります)
レーザースキャン顕微鏡検査で、UKRAINは癌細胞の核(特に核小体)に集積していました。
同じ実験条件で、正常細胞の核にはほとんど集積しませんでした。UKRAINは紫外線で蛍光を発しますが、皮膚癌や癌の皮膚転移の患者では、このUKRAINの蛍光は腫瘍の部分にのみ観察されました。
●動物や人の脾臓細胞や末梢リンパ球やマクロファージを用いた実験で、UKRAINはこれらの免疫細胞を活性化しました。リンパ球やナチュラルキラー細胞の活性化など、癌患者において低下した免疫システムを正常化させる効果も認められました。このような作用から、UKRAINはBiological Response Modifier (BRM)としての効果も有していることが示されました。
●UKRAINは腫瘍を縮小させる効果があり、正常な組織にダメージを与えずに、癌組織の完全な消滅(complete regression)も期待できます。腫瘍が縮小しない場合でも、腫瘍が大きくならない状態を維持する効果を認めることもあります。

安全性について:
●ネズミを使った生殖に及ぼす実験で、UKRAINには、慢性毒性や胎児に対する毒性、催奇形性、発がん性、変異原性などは認められませんでした。
●アレルゲン活性も認められませんでした。
●ネズミに対する急性毒性は、LD50(半分が死ぬ量)が、体重1kg当たり350 〜 400 mg でした。
●UKRAINを投与して、直接毒性による副作用や、アレルギー反応、アナフィラキシーショックは、現在まで全く経験されていません。
●増殖している正常な細胞に対して毒性を示さず、骨髄抑制は生じません。
●白血球や血小板や赤血球の減少、粘膜からの出血、脱毛は認められません。
●毒性を示す濃度と有効濃度との比率(therapeutic index)は1250であり、極めて安全性が高かいことが示されています。正常細胞の培養細胞に対してUKRAINは全くダメージを起こさず、正常細胞に毒性を示す濃度の数百分の1の濃度で癌細胞を殺すことができました。
●UKRAINの人における体内分布や代謝や排泄に関しては、まだ十分に明らかになっていません。腎臓や肝臓機能が障害された場合のUKRAINの排泄における影響は検討されていません。

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