アルテミシニン誘導体の抗がん作用

【アルテミシニン誘導体は抗マラリア薬として開発された】

青蒿(セイコウ:Artemisia annua)というキク科の薬草は中国伝統医学でマラリアなど様々な感染症や炎症性性疾患の治療に古くから使用されていました。
抗マラリア作用の活性成分がアルテミシニン(Artemisinin)で、その効果を高めたアルテスネイト(Artesunate)アルテメーター(Artemether)という2種類の誘導体が合成されています。これらは現在、マラリアの治療薬として世界中で使用されています。
青蒿からアルテミシニンを発見し、抗マラリア薬を開発した中国の女性科学者の屠呦呦(Tu Youyou)博士は、2015年のノーベル医学生理学賞を受賞しています。
マラリアは、熱帯・亜熱帯地域の70ヶ国以上に分布し、全世界で年間3~5億人、死者は100~150万人と言われる感染症ですので、その治療薬としてのアルテスネイトなどのアルテミシニン誘導体の開発は、ある本では「伝統薬から開発された医薬品としては、20世紀後半における最大の業績」という表現がなされているほど、医学において重要な成果だと言われています。

中国の女性科学者の屠呦呦(Tu Youyou)博士は、2011年のラスカー賞受賞に続いて、2015年度のノーベル医学生理学賞を受賞した。屠博士は、古くからマラリアの治療に利用されてきた青蒿(Artemisia annua)という薬草から活性成分としてアルテミシニン(Artemisinin)を発見した。アルテミシニンおよびその誘導体(アルテスネイト、アルテメーター)は、現在マラリアの治療薬として世界中で使用されている。さらに、抗がん作用があることから、がんの代替医療にも使用されている。

青蒿(セイコウ) という生薬は強力な解熱作用があり、中国医学でマラリアなど様々な感染症や炎症性性疾患の治療に古くから使用されていました。1972年に中国の湖南省長沙市の郊外で発掘された馬王堆漢墓は2100年以上前に作られた墓(古墳)ですが、その中から見つかった「五十二病方」という医書の中に、青蒿が記載されています。
青蒿はartemisia annuaという植物です。artemisiaとはヨモギのことで、青蒿はキク科ヨモギ属の植物です。 英語ではsweet Annieやwormwoodと呼ばれ、和名はクソニンジンとかカワラニンジンと呼ばれています。
ベトコンを援助するために中国軍がベトナム戦争に従軍しましたが、密林でマラリアに感染して病死する兵士が多く、そこで毛沢東の命令でマラリヤの治療薬の開発が国家プロジェクトとして1967年に開始されました。その指揮を取ったのが、当時37歳の屠博士でした。 屠博士は1970年代に、その薬効成分のアルテミシニン(Artemisinin)を分離し、アルテミシニンやその誘導体のアルテスネイト(Artesunate)やアルテメーター(Artemether)の抗マラリア薬としての有効性を確認しました。
近年、このアルテミシニン誘導体が抗がん物質として注目を集めています

【アルテミシニンとその誘導体は正常細胞には毒性が少なく、がん細胞に抗がん作用を示す】

アルテミシニンおよびその誘導体(アルテスネイト、アルテメーター)はマラリア原虫を死滅させる作用があるので、マラリアの治療薬として使用されていますが、がん細胞を死滅させる作用も報告されており、がんの代替医療でも15年くらい前から使用されています。
培養がん細胞を使った実験でアルテミシニンやアルテスネイトががん細胞を死滅させる作用や、がん細胞を移植した動物実験で、がんを縮小させる効果が報告されています。
さらに、抗腫瘍作用を示す投与量で、正常細胞に対する毒性が低く、副作用がほとんど無いという特徴を持っています。
アルテスネイトは昔からマラリアの治療に使われていた生薬の成分で、その安全性や副作用が軽度であることが確かめられています。

最近の研究では、アルテスネイトなどのアルテミシニン誘導体は多彩な作用メカニズムで抗腫瘍効果を発揮することが報告されています。
がん細胞内でフリーラジカルを産生して酸化ストレスを高める作用、血管新生阻害作用、DNAトポイソメラーゼIIa阻害作用、細胞増殖や細胞死のシグナル伝達系に影響する作用などが報告されています。

臨床試験での有効性も報告されています。
アルテスネイトは水溶性で、抗マラリア作用や抗がん作用はアルテミシン誘導体の中で最も高いと考えられています。毒性が極めて低いので、副作用がほとんど無いのが特徴です。しかし、体内での半減期が比較的短いという短所もあります。

アルテメーターは脂溶性で、アルテスネトより体内の半減期は長く、血液脳関門を容易に通過するので、脳マラリアや脳腫瘍にも効果があります。しかし、高用量を使用すると神経毒性が現れるという副作用があります。

アルテミシニンは、アルテスネイトとアルテメーターの2つの中間的な半減期をもち、血液脳関門も通過します。
米国では、これら3種類の成分を含有する製品がサプリメントとして販売されています。

【 アルテスネイトはがん細胞に多く存在する鉄イオンと反応して細胞死を誘導する】

アルテスネイトは分子の中に鉄イオンと反応してフリーラジカルを産生するendoperoxide bridge を持っており、がん細胞は鉄を多く取り込んでいるので、その鉄と反応してフリーラジカルを産生してがん細胞を死滅させるという作用機序が提唱されています(下図)。

アルテスネイトは鉄イオンと反応してフリーラジカルを産生するendoperoxide bridge を持っている。がん細胞は正常細胞に比べて鉄を多く含むので、がん細胞を選択的に傷害することができる。


がん細胞で活性が亢進している転写因子の低酸素誘導性因子-1(HIF-1)はトランスフェリンレセプターの発現を高めます。
鉄は細胞増殖に必要なため、がん細胞はトランスフェリンレセプターを多く発現して鉄を多く取り込んでいます。細胞分裂の早いがん細胞ほど鉄を多く取り込んでいると言われています。
したがって、がん細胞内の鉄と反応してフリーラジカルを発生するアルテスネイトは、正常細胞を傷つけずにがん細胞に選択的に傷害を与えることができます。  
アルテスネイトを投与する前に、鉄を投与してがん細胞内の鉄の量を増やしておくと抗腫瘍効果を増強することができます。
アルテスネイトによってがんや肉腫が縮小した臨床報告があり、人間における腫瘍にたいしても有効であることが報告されています。
進行した非小細胞性肺がんの抗がん剤治療にアルテスネイトを併用すると抗腫瘍効果が高まることが、中国で行われたランダム化比較試験で報告されています。  
がん細胞内でフリーラジカルを産生して酸化ストレスを高める以外に、血管新生阻害作用、DNAトポイソメラーゼIIa阻害作用、細胞増殖や細胞死のシグナル伝達系に影響する作用なども報告されています。
最近の報告ではアルテスネイトがフェロトーシス(Ferroptosis)という細胞死を誘導することが注目されています。

【アルテスネイトはフェロトーシス(Ferroptosis)を誘導する】

細胞死の初期機構として,アポトーシス,ネクローシス,オートファジーがあります。
アポトーシス(Apoptosis)は正常細胞が老化して新しい細胞に置き換わるような、生体の細胞回転で使われる細胞死のパターンです。生体では1日に約200分の1の細胞がアポトーシスで死滅し、再生した新しい細胞が補っています。この様な細胞交代型の細胞死では、免疫細胞や炎症細胞が気づかないような死に方とします。このような生理的な細胞死に炎症反応が惹起されると生体は大変なことになります。
一方、脳梗塞や心筋梗塞の用な虚血や、火傷や毒物による細胞傷害では、壊死(ネクローシス)という細胞死を起こして、細胞が崩壊して炎症反応が引き起こされます。 ネクローシスの場合は組織の障害を生体に知らせて、防御と修復を起こす必要があるからです。
オートファジー(autophagy)は細胞内の構成成分を分解するための細胞機能で、このオートファジーが関与するプログラム細胞死をオートファジー細胞死と呼んでいます。
このように細胞はいろんなメカニズムや方法で死滅します。細胞死のメカニズムはこの3つだけではありません。
最近、フェロトーシス(Ferroptosis)という細胞死が提唱されています。「フェロ(Ferro)」は鉄という意味で、「ptosis」は「下垂する」という意味で、「枯れ葉が枝から落ちる様から細胞の死を意味」します。
フェロトーシスは,細胞死の1つの機構と考えられていますが,アポトーシスやネクローシスやオートファジーの3つの細胞死とは異なる特徴を有します。
フェロトーシスでは,鉄依存的な活性酸素種の発生と過酸化した脂質の蓄積によって,細胞死が起こります
細胞内の鉄に依存する機構であり,ほかの金属類には依存しません。
アルテスネイトをがん治療に使うときに、アルテスネイト服用の数時間前に鉄剤を服用するとアルテスネイトの抗腫瘍作用が増強することが15年くらい前から報告されています。
がん細胞では鉄の取込みが亢進しており、この細胞内の鉄にアルテスネイトが反応して細胞内で活性酸素を産生させ、細胞傷害を引き起こすと考えられています。
2015年くらいから、「アルテミシニン誘導体は腫瘍細胞に鉄依存性細胞死(フェロトーシス)を誘導する」 という内容の研究結果が複数報告されています。例えば、以下のような報告があります。

Identification of artesunate as a specific activator of ferroptosis in pancreatic cancer cells.(膵臓がん細胞におけるフェロトーシスの選択的活性剤としてのアルテスネイトの同定)Oncoscience. 2015 May 2;2(5):517-32.
【要旨】
がん遺伝子のKRasの活性化は、膵臓がん細胞のアポトーシス抵抗性を高める。したがって、膵臓がん細胞の細胞死を誘導する治療が重要である。
アルテスネイトは抗マラリア薬として使用されているが、様々な種類のがん細胞にプログラム細胞死を誘導することが報告されている。アルテスネイトはがん細胞内で活性酸素種の産生を高めることによって細胞死を誘導する作用メカニズムが示されている
本研究では、アルテスネイトが膵臓がん細胞において活性酸素種とリソゾームの鉄に依存するメカニズムで細胞死を誘導することを明らかにした
KRasを恒常的に発現している膵臓がん細胞において、アルテスネイトは強い細胞傷害活性を示した。アルテスネイトは非腫瘍性の膵管上皮細胞に対しては細胞傷害作用を示さなかった。
アルテスネイトによる細胞死はアポトーシスでも壊死(ネクローシス)でもなく、フェロトーシス(ferroptosis)であった。ファロトーシスは最近になって明らかになった細胞死のメカニズムで、活性酸素種や鉄に依存するプログラムされたネクローシス(壊死)の一種で、特にRasが活性化した細胞で引き起こされることが知られている。
アルテスネイトを添加した培養液にフェロトーシス阻害剤のferrostatin-1を添加すると、アルテスネイトで誘導される脂質過酸化と細胞死が阻止され、細胞は長期間生存し増殖した。 アルテスネイトによるフェロトーシスの活性化は膵臓がんの治療法として新規で有効な治療法となる可能性がある

がん細胞に酸化ストレスを高めるとがん細胞は死滅する

フェロトーシスは細胞内の鉄に依存して活性酸素種が発生し、酸化ストレスが亢進して細胞死を引き起こします。したがって、がん細胞に酸化ストレスを高める治療はアルテスネイトの抗がん作用を増強する可能性があります
このような方法としてジクロロ酢酸ナトリウム2-デオキシ-D-グルコースサラゾスルファピリジン(サラゾピリン)オーラノフィンスリンダクケトン食などがあります。

 

青蒿(セイコウ:Artemisia annua)から分離された活性成分が アルテミシニンで、その効果を高めたアルテスネイト(Artesunate)アルテメーター(Artemether)という2種類の誘導体が合成されています。
アルテスネイトは水溶性で、抗マラリアや抗がん作用はアルテミシン誘導体の中で最も高いと考えられています。毒性が極めて低いので、副作用がほとんど無いのが特徴です。しかし、体内での半減期が比較的短いという短所もあります。
アルテメーターは脂溶性で、アルテスネトより体内の半減期は長く、血液脳関門を容易に通過するので、脳マラリアや脳腫瘍にも効果があります。しかし、高用量を使用すると神経毒性という副作用があります。
アルテミシニンは、アルテスネイトとアルテメーターの2つの中間的な半減期をもち、血液脳関門も通過します。

Artesunate(商品名Hepasunate)は、1カプセル(50mg)が60カプセル入っています。12000円(税込み)です。

Artemixは1カプセル中にアルテミシニン誘導体のArtesunate 50 mg, Artemether 40 mg, Artemisinin 50 mgを含みます。Artemixはこの3種類のアルテミシニン誘導体を含有するので、その相乗効果が期待できます。30カプセル入り12000円(税込み)


Hepasunate

Artemix

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