【毛髪には寿命があって自然に抜ける】
毛髪は約10万から15万本あり、一日に0.35ミリ成長するので1ヶ月に約1cm伸びます。毛髪には一定の寿命があり、成長したあと自然に抜け、再び同じ毛包から新しい毛髪が生えてきます。1日に平均約100本抜けますが、毛の生える毛包が萎縮すると脱毛が進み禿げてきます。思春期を過ぎた男性の脱毛が徐々に進む病気を「男性型脱毛症」といいますが、日本では脱毛や薄毛で悩む男性は1000万人以上に上るといわれています。
【効果を競う育毛・発毛剤】
男性型脱毛症に対する育毛・発毛薬がいくつか販売されています。ライオンの「イノべ−ト」という育毛剤は、脱毛部位で減少している発毛促進物質を増やすサイトプリンを主成分としています。
大正製薬の発毛剤「リアップ」の主成分ミノキシジルはもともと血圧を下げる薬でしたが、薬を飲んだ患者の頭髪がぐんぐん伸びたことから育毛剤として開発されました。ミノキシジルは毛乳頭細胞に働きかけ、毛母細胞の増殖を促進する効果があります。
飲む発毛剤としては「ハツモール」という内服薬があり、この主成分のセファランチンは副交感神経に働き、頭皮の血行を改善し発毛を促し、毛母細胞の増殖を活性化する効果もあります。
もっとも効果が高いのが、米メルク社が開発したプロペシア(Propecia)で、医師の処方が必要な薬です。日本ではまだ未承認ですが、万有製薬が来年三月までの発売を目指しているそうです。
男性ホルモンは一般に体毛の成長を促しますが、頭髪だけは抑えます。この働きを抑えることで頭髪の発毛促進、脱毛抑制の効果があり、四十数か国で販売中です。プロペシアとミノキシジルの併用で相乗効果があるとのデータも発表されています。
【プロペシアは処方箋の必要な医薬品】
プロペシアはメルク社が開発した世界初の飲み薬タイプの毛生え薬です。
薬効成分のFinasteride(フィナステリド)は前立腺肥大症の治療薬として開発されましたが、この薬を服用していた男性に育毛効果が見られたことから、育毛剤としても製品化されました。
日本の厚生労働省に相当するアメリカFDA(食品医薬品局)が初めて認可した育毛医薬品です。使用者の80%以上に育毛効果があったという報告もあります。効き目が確実な分、副作用を無視した安易な使用は危険であり、入手に際して、医師の処方箋が必要な要指示薬となっています。しかし、個人使用に関しては、個人輸入で入手は簡単で、多くの輸入代行のサイトがあります。
【プロペシアは男性専用】
プロペシアは男性専用です。生え際が後退したり頭頂部がハゲるという男性型脱毛症に効果があります。このような男性型脱毛症は遺伝的要因と男性ホルモンの複合的作用によって引き起こされると考えられており、プロペシアは男性ホルモンに働きかけて脱毛プロセスを逆行させることによりその効果を発揮します。プロペシアは頭髪以外の体毛には影響を与えません。
プロペシアの効果が一番高い人々は、脱毛が始まったとかやや進行状況にある人々です。脱毛がある程度進行した場合には、プロペシアの効果は乏しくなります。
男性ホルモンのテストステロン(Testosterone)から5-α還元酵素によって体内で生成するデヒドロテストステロン(Dihydrotestosterone=DHT)は頭髪の毛乳頭を萎縮させて男性型脱毛の原因になります。
プロペシアは5-α還元酵素の働きを阻害する作用があります。プロペシアを服用すると体内のDHTが減少するので男性型脱毛を根本的に治すことができるのです。
図:頭髪の毛乳頭を萎縮させるデヒドロテストステロン(DHT)の合成に必要な5-α還元酵素の働きをプロペシアがブロックすることによって発毛を促進する
【プロペシアの服用の仕方】
プロペシアは1日1錠で、それ以上服用しても効果は変わりません。食前でも食後でも、いずれでも結構です。
毛髪はゆっくりと成長するため、プロペシアの効果が目に見えるようになるには、通常3ヶ月以上の期間が必要とされています。一定期間継続服用されても効果が現れない場合は使用を中止して下さい。
効果を持続するためには、プロペシアを継続して服用することが必要です。服用を中止すると、多くの場合、プロペシアによって増えた毛髪は1年以内に失われてしまいます。
プロペシアの副作用はまれで、ほとんどの男性には影響がないとされています。しかし、男性ホルモンに影響するため、性欲減退やインポテンス(勃起不全)が起こることがあります。このような副作用が起こる頻度は100人に2人以下と非常に少なく、飲み続けることにより薬に対して耐性ができるため治ってしまう程度のものでほとんど心配いりません。インポテンスが持続する場合には服薬を中止すれば改善します。他の薬との併用も問題ない安全性の高い薬です。
プロペシアは男性専用の脱毛治療薬ですので、女性はプロペシアを服用しないでください。特に、妊産婦または妊娠の可能性のある女性はプロペシアを服用してはいけませんし、錠剤のコーティングがとれているプロペシアを触ってもいけません。プロペシアの有効成分フィナステライドが体内に吸収された場合、胎児の生殖器に異常を与える危険性があります。