Q1: 善玉菌、悪玉菌とは?
A:
腸内細菌とは、腸の中に棲み、様々な働きをしている菌のことです。「細菌」といっても、チフス菌とかコレラ菌のような感染症を起こす菌とはおおいに異なります。
腸の中には約100種、100兆ほどの腸内細菌がいると言われ、それぞれがビタミンやミネラル、タンパク質などを合成しながら、腸の活動を調整し、人間の生命維持活動を行なっています。その腸内細菌の中で、人間の健康にとってよい働きをするものを善玉菌(有益菌)、悪い働きをするものを悪玉菌(有害菌)と呼んでいます。善玉菌の代表はビフィズス菌などの乳酸菌で、反対に悪玉菌の代表と言えばウェルシュ菌やクロストリジウム菌などの腐敗菌です。腐敗菌は便秘や下痢の原因になり、タンパク質を分解して発がん物質を作ったり、老化を早めたりすると言われています。
問題は善玉菌が減ると悪玉菌が増えてしまうことです。生後1週間の乳児の腸内は90%以上ビフィズス菌で占められていますが、離乳期を過ぎると10%前後に減り、老人になると1%以下に減少し、その代りに悪玉菌が増加してきます。腸内細菌を善玉菌優位の状態に保つことは老化やがんの予防に有効と考えられています。体を若く保つ上でも、腸内環境を良くすることは大切です。
あなたの便やガスの臭いがきついようでしたら、腸内環境は良い状態ではありません。悪玉菌がたくさんいるということですので善玉菌(乳酸菌)を増やして、腸内環境を改善しましょう。
Q2: 乳酸菌はなぜ癌を予防するのですか?
A:腸内細菌は、腸管内の物質代謝を通して人の発がんにも重要な影響を及ぼします。ウェルシュ菌やクロストリジウム菌などのいわゆる悪玉菌といわれている腐敗菌は、腸内の蛋白質やアミノ酸を腐敗させて発がん物質を産生します。一方ビフィズス菌などの乳酸菌は、悪玉菌の増殖を抑制し、また発がん物質の産生を抑制し、免疫力増強作用なども有しているため、大腸がんのみならず種々のがんの予防に有効であることが知られています。
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図:ウェルシュ菌やクロストリジウム菌などのいわゆる悪玉菌といわれている腐敗菌は、腸内の蛋白質やアミノ酸を腐敗させて発がん物質を産生する。一方ビフィズス菌などの乳酸菌は、悪玉菌の増殖を抑制し、免疫力増強作用なども有しているため、種々のがんの予防に有効。乳酸菌製品(プロバイオティクス)や乳酸菌の成長を促進するプレバイオティクス(フルクトオリゴ糖など)は、大腸がんの予防、腹部手術後の感染症の予防、抗がん剤による下痢や腹部不快感を緩和する効果などの有効性が、ランダム化比較臨床試験で明らかになっている。 |
Q3: プロバイオティクスやプレバイオティクスとは何ですか?
A:
腸内に善玉菌を根付かせ増やすためには、プロバイオティクスおよびプレバイオティクスの利用が有用です。
プロバイオティクス(probiotics)は文字通りには「生命に有益な物質」という意味ですが、健康に有益な効果をもたらす腸内細菌(いわゆる善玉菌)を指します。「腸内フローラの善玉菌と悪玉菌のバランスを改善して動物に有益な効果をもたらす生菌添加物」のことで、乳酸菌が代表です。乳酸菌はビフィズス菌やアシドフィルス菌、ラクトバチルス、ブルガリア菌など乳酸を産生する腸内細菌です。
フルクトオリゴ糖など善玉菌の増殖を促進する物質のことをプレバイオティクス(prebiotics)と呼びます。腸内の善玉菌に働いて、増殖を促進したり、善玉菌の活性を高めることによって健康に有利に作用する物質のことです。
フルクトオリゴ糖は短鎖糖質で、3〜10個の糖分子から構成されており、最低その2つはフルクトースです。人間はフルクトオリゴ糖を消化できませんが、ビフィズス菌と乳酸菌は成長と増殖のためにフルクトオリゴ糖を優先的に利用します。対照的に有害細菌はこれらの短鎖糖質を利用できません。
乳酸菌生成エキス(アルベックス)も乳酸菌の成長を促進するので、プレバイオティクスの一種と言えます。
このようなプロバイオティクスとプレバイオティクス組み合わせると、効果的な腸内環境の改善ができます。プロバイオティクスとプレバイオティクスとを合わせたものをシンバイオオティクス(synbiotics)と呼んでいます。
乳酸菌で発酵させた食品(ヨーグルトなど)は、世界中の多くの人びとに利用されています。ヒトと乳酸菌の共生関係は、栄養上も治療の上でも重要な利益があり、長い歴史があります。
常在細菌叢の一部として、乳酸菌は栄養素を求めて他の微生物と競合的に働き、pHおよび酸素濃度を病原微生物(悪玉菌)にとって好ましくない値に変更し、物理的に付着部位を覆うことによって病原体の侵入を予防したり、悪玉菌の増殖を抑える様々な因子を産生することによって、人間の健康に維持・増進に役立っています。
ビフィズス菌は取り続けないと年令とともに減少し、せっかく増えたビフィズス菌も、ヨーグルトを食べるのをやめれば1週間で元の状態に戻ってしまうといわれています。したがって、腸内細菌の善玉菌を増やすには、ヨーグルトなどの乳酸菌飲料を毎日飲み続けることが大切です。毎日10〜100億個の生きたアシドフィルス菌あるいはビフィズス菌の摂取が適当と言われています。
さらに、ビフィズス菌の餌となるオリゴ糖や食物繊維を一緒にとるとより効果的です。オリゴ糖を使ったシロップや清涼飲料水等がたくさん発売されており、ビフィズス菌にオリゴ糖などを添加した健康食品も販売されています。
プロバイオティクスおよびプレバイオティクスは安全で、多く摂取しても胃腸ガスの一時的な増加以外に副作用は伴わないので、がん患者に日頃から摂取が勧められるサプリメントです。
プロバイオティクスやプレバイオティクスのがん患者に対する臨床試験として以下のような報告があります。
○ 100例の大腸がん患者を対象に、大腸がん切除手術前6日間と術後10日間プロバイオティクスの投与を受けた50例とコントロール群50例を比較したランダム化試験の結果、プロバイオティクス投与群では、術後の感染症の合併症が減少した。
プロバイオティクスは腸内細菌叢の状態を良くし、腸管粘膜のバリアを強め、細菌感染症のリスクを低減させる効果がある。(Aliment Pharmacol Ther, 2010 Oct 25, [Epub ahead of print]) |
○ 膵臓がんで膵頭十二指腸切除を受けた64例を対象にしたランダム化比較試験。
プロバイオティクス投与群は、入院後から手術までの3〜15日間プロバイオティクスを摂取し、手術後は術後2日目から再開し退院まで継続。
手術後の感染症の発生率は、対照群が53%(18/34)、プロバイオティクス投与群は23$(7/30)であり、プロバイオティクス投与により手術後の感染症の頻度が低下した。(Hepatogastroenterology 2007, 54(75): 661-3) |
○ 5-FUを含む抗がん剤治療を受けた150例の大腸がん患者を対象にしたランダム化試験。
抗がん剤治療中に発生したグレード3または4の下痢は、対象群が37%に対して、乳酸菌(Lactobacillus)と食物繊維のサプリメントの投与を受けた群では22%と低下。
プロバイオティクス投与により腹部不快感は緩和し、入院期間も短縮された。腹部症状の副作用による抗がん剤の用量の減量の頻度も少なくなった。
乳酸菌のサプリメントは5-FUの副作用の腹部不快感や下痢を緩和する。 |
ヨーグルトや、フルクトオリゴ糖の多いバナナ、タマネギ、アスパラガス、ニンニク、トマトなどを多く食べ、さらに乳酸菌やフルクトオリゴ糖を含むサプリメントを利用して、積極的に腸内環境を善玉菌優位にすることは、免疫力や解毒力を高め、胃腸の働きを良くする効果が期待できます。
サプリメントとしては、腸内に棲みついている乳酸菌を増やす乳酸菌生成エキスの『アルベックス』を推奨しています。
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