(1) 血管新生阻害作用:
腫瘍血管の新生を促進するVascular Endothelial Growth Factor(VEGF,血管内皮増殖因子)、Tumor Necrosis Factor-α(TNF-α,腫瘍壊死因子アルファ)、Interleukin(IL)-6やIL-8の産 生や活性を抑える。 |
(2) 腫瘍細胞の増殖抑制:
がん細胞のアポトーシスを起こりにくくしている蛋白質(Bcl-2ファミリーの蛋白質など)の細胞内の産生量を減らし、アポトーシス抵抗性を減弱させる。ある種の固形がんの増殖を促進するIL-6の産生を抑制する。
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(3) 抗腫瘍免疫の活性化:
T細胞受容体を介したT細胞の反応性を高め、T細胞の増殖を刺激し、IL-2とインターフェロン-γ(IFN-γ)の産生を促進する。ナチュラルキラー細胞の数を増加させる。
サリドマイドによって腫瘍細胞のアポトーシス感受性が高まるので、リンパ球によるFasやTRAILを介した腫瘍細胞のアポトーシスが起こりやすくなる。(リンパ球はFasやTRAILという受容体を介したメカニズムで腫瘍細胞にアポトーシスを誘導している) |
(4) 接着因子の発現抑制、転移能の抑制:
TNF-αの産生を抑えることによって、TNF-αの刺激で血管壁に発現する接着因子のintracellular adhesion molecule-1 (ICAM-1)、vascular-cell adhesion molecule-1 (V-CAM-1)、E-selectinの産生を抑えることによってがん細胞の転移を抑制する。
これらの因子は、がん細胞が血管内皮細胞に接着して転移巣を形成する最初のステップにおいて重要な役割を果たしている。 |
(5) プロスタグランジンE2の産生抑制:
シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)の発現を抑えることによって、血管新生を刺激し、がん細胞の増殖を促進し、免疫を抑制するプロスタグランジンE2の産生を抑える。 |
主な参考文献:
●Sleijfer S, Kruit WH, Stoter G., Thalidomide in solid tumours: the resurrection of an old drug.
Europian Journal of Cancer 40:2377-2382 (2004)
●Eleutherakis-Papaiakovou V, Bamias A, Dimopoulos MA, Thalidomide in cancer medicine
Annals of Oncology 15:1151-1160 (2004)
●Ribatti D, Vacca A, Therapeutic renaissance of thalidomide in the treatemnt of hematological malignancies.
Leukemia 19: 1525-1531, (2005)