東京銀座クリニック
 
ホーム 院長紹介 診察のご案内 診療方針 書籍案内 お問い合わせ

高濃度ビタミンC点滴療法

■高濃度ビタミンC点滴療法とは:

【ビタミンCはがん患者の抵抗力を高め、さらに直接がん細胞を殺す効果がある】

ビタミンCを点滴あるいは経口で大量に投与する治療法は、がんやウイルス性肝炎の代替医療の一つとして、一部の医師によって行われてきました。当院(銀座東京クリニック)でも、ウイルス性肝炎の患者さんを中心に、1回にビタミンCを20〜40g点滴するビタミンC点滴療法を開業当初(2002年)より実施しています。

以前は、ビタミンCは免疫力や抵抗力を高める効果によって、進行がんや末期がん患者に自覚症状の改善や延命効果を発揮すると考えられてきましたが、最近の研究によると、点滴で1回に数10グラムの大量のビタミンCを投与すると、がん細胞を直接殺す効果が期待できる可能性が示唆されています。

ビタミンCの大量療法ががん患者の予後を良くするという説は、主としてポーリングとスコットランドの外科医キャメロンによる報告に基づいています。

多くのがん患者はビタミンCの体内濃度が減少しているので、がん患者ではビタミンCの需要が高まっており、ビタミンCががんに対する抵抗力に関与しているとポーリングやキャメロンは考えていました。そして、ビタミンCを十分に補充すれば、がんに対する抵抗力が高まり、がんの治療に有効と考えていました。
そこで、1970年代半ばにキャメロン医師は毎日10gのビタミンCで進行がんの治療を行いました。
複数の医師から通常の治療の継続が意味がないと判断された100例の末期がん患者にビタミンCを点滴と経口で投与し、ビタミンCを投与しなかった1000例の同じような末期がん患者と比較しました。その結果、ビタミンCの投与を受けなかったグループの平均生存期間が50日であったのに対して、ビタミンCの投与を受けたグループの平均生存期間は210日以上と、4.2倍も生存期間が延びたことを1976年に報告しています。この臨床試験では、1日に10gのビタミンCを最初の10日間は点滴、その後は経口で投与しています。(Proc. Natl Acad Sci USA. 73:3685-3689, 1976)

さらに観察期間を延ばした結果、患者が治療困難と言われた時点から1年以上生存した割合は、ビタミンCの投与を受けていないグループでは0.4%であったのに対して、ビタミンCの投与を受けたグループでは22%であったという結果を1978年に報告しています。この22例のがん患者は、明らかな末期がんの状態になってからの平均生存期間は2.4年で、そのうち8例は論文の報告時点でまだ生存中でした。
(Proc. Natl Acad Sci USA. 75:4538-4542, 1978)

ビタミンCを投与すると進行がんや末期がんの患者の自覚症状の改善や延命に有効であるという報告は、日本を含め多くの研究者が発表しています。
しかし、メイヨークリニックの研究グループが行った進行がん患者を対象にした二重盲検による臨床試験では、ビタミンCを大量に補充しても延命効果は認められなかったため、ビタミンC大量療法はがんの代替医療としては次第に行われなくなりました。

しかし最近になって、米国を中心に、ビタミンCを50グラム以上(場合によっては100g以上)の大量を点滴で投与すると、がん細胞を殺す効果があることが報告されています。
がん細胞を培養している培養液に数mg/mlに達する高濃度のビタミンCを添加するとがん細胞が死ぬのに対して、この濃度では正常細胞はダメージを受けないことが報告されています。

このような高濃度の場合、ビタミンCはがん組織において過酸化水素を発生してがん細胞を直接殺す作用があると推測されています。
30年前のポーリングとキャメロンの時代には、ビタミンCは、体の抵抗力や免疫力を高めることによって末期がん患者の延命に寄与すると考えられていましたが、最近の考えでは、ビタミンCの直接的な抗がん作用が重視されるようになってきたのです。

2006年には、米国の国立健康研究所(National Institutes of Health)や国立がん研究所(National Cancer Institute)を中心とした研究グループが、高濃度のビタミンC点滴療法によって著しい延命効果が得られた進行がんの3例を報告し(CMAJ 74: 937-942, 2006)、高濃度ビタミンC点滴療法の有効性を検討する臨床試験が行なわれています。

【高濃度のビタミンCはがん細胞を選択的に殺す】

ビタミンCは抗酸化性ビタミンとして知られており、生体内で発生した活性酸素やフリーラジカルに電子を与えて、活性酸素やフリーラジカルを消去します。
酸化というのは、相手の物質から電子を奪い取ることで、酸化剤というのは物質から電子を奪い取る性質の高い物質のことです。ビタミンCが抗酸化剤と言われるのは、活性酸素やフリーラジカルに電子を与えて、これらの活性酸素やフリーラジカルを安定化させるからです。

一方、電子を与えて酸化されたビタミンC自身は、活性酸素と同じように相手を酸化する性質を持つことになります。この酸化されたビタミンCをアスコルビン酸ラジカルと呼びます。アスコルビン酸ラジカルは水溶性なので、すぐに尿中に排泄されるので、生体に酸化障害を起こすことはありません。
つまり、ビタミンCが抗酸化剤として、美容に利用されるのは、細胞や組織にダメージを与える活性酸素やフリーラジカルに電子を与えて安定化させ,自分は生体成分の身代わりになって酸化された後に、尿中から排泄されるからです。

体内では常に活性酸素のスーパーオキシドが発生していますが、これは抗酸化酵素の働きでスーパーオキシド → 過酸化水素 → ヒドロキシラジカルを経て水になります。
ビタミンCを大量に投与するとがん細胞の周囲で過酸化水素が大量に発生するという研究報告があります。正常細胞では過酸化水素を酸素と水に変えるカタラーゼがあるので障害を受けにくいのに対して、がん細胞ではカタラーゼの活性が低下しているので、過酸化水素によるダメージを受けてがん細胞を選択的に殺す効果があると推測されています。
がん細胞を殺すだけの大量の過酸化水素を発生させるために、ビタミンCの血中濃度を高める必要があり、数十グラムの大量のビタミンCを点滴で投与する必要があるということです。

ただし、ビタミンCががん細胞を殺すメカニズムはまだ十分に証明されているわけではありません。
最近の研究では、他のメカニズムも報告されています。
例えば、Neuroblastomaやmelanomaを使った実験では、がん細胞のトランスフェリンレセプターの量を減らし、がん細胞内の鉄を枯渇させることによってアポトーシスを誘導する可能性が報告されています
鉄は細胞が分裂するために必要なミネラルで、がん細胞では鉄の取り込みを行うトランスフェリンレセプターの発現が増えていて、鉄を多く含むことが知られています。
この研究では、脳腫瘍の一種のニューロブラストーマを培養している培養液にビタミンCを添加すると、がん細胞のトランスフェリンレセプターの量が減少することを報告しています。
(J Cell Physiol 2005, 204(1):192-197./Molecular Cancer 2007, 6:55)

ビタミンCはグルコースと構造が似ており、細胞内への取り込みは細胞膜のglucose transporterによって行われています。がん細胞はグルコースの取り込みが増しており、そのためglucose transporterの量が増えているという報告があります。したがって、ビタミンCの細胞内への取り込みが正常細胞よりもがん細胞の方が多いため、がん細胞が選択的にビタミンCの作用を受けやすいという意見もあります。

ビタミンCは結合組織のコラーゲンの産生を高めるので、がん細胞を結合組織の中に閉じ込めるという説もありますし、免疫力や抵抗力を高めることが延命に寄与しているという意見もあります。

いずれにしても、ビタミンCはいろんなメカニズムで抗腫瘍作用を発揮しているようです。

【ビタミンC大量療法は放射線や抗がん剤の効き目を高め、副作用を緩和する】

ビタミンCが抗酸化作用だけの効果しかなければ、放射線や一部の抗がん剤の効き目を弱める可能性があります。それは放射線や一部の抗がん剤は、活性酸素やフリーラジカルによる細胞障害作用を利用しているので、活性酸素やフリーラジカルを消去する抗酸化剤の併用は抗腫瘍効果を減弱させる可能性があるからです。
しかし、ビタミンCの大量療法では、むしろがん組織に過酸化水素の発生を高めるような作用機序で効いているのであれば、放射線治療や抗がん剤治療と併用して、これらの効果を高めることになります。さらに、放射線や抗がん剤による正常細胞のダメージを軽減する効果も期待できます。
ビタミンC大量療法を併用すると、抗がん剤や放射線治療の効き目を高め、副作用を緩和するという報告が多く発表されています
正常細胞に対する障害作用はほとんど無いため、副作用もほとんど認められません

■方法:

ビタミンCは防腐剤無添加の点滴用ビタミンCを使用します。
500ccの輸液剤に25〜50g(場合によっては75g〜100g)のビタミンCを加えて、60〜90分かけて点滴します。輸液剤としてビタミンCの量が少ない場合はフルクトラクトを使用し、ビタミンCの量が多いとき(50g以上)は、浸透圧が高くなるので蒸留水を使用しています。

進行がんの治療では、1回50gで週2回を基準にしています。がんの進行状況や体調によってビタミンCの量や回数を変えています。

■費用:

診察料、手技料、消費税込みの1回分の費用

ビタミンC25g:10000円
ビタミンC50g:18000円
ビタミンC75g:26000円
ビタミンC100g:34000円

■注意:

がん治療におけるビタミンC大量点滴療法は代替医療の一つであり、臨床効果が十分に証明されたものではありません、ビタミンCの抗がん作用の根拠は培養細胞や動物実験が元になっており、人間の進行がんや末期がんに対する有効性に関する結論はまだ得られていません。今後の厳密な臨床試験で効果が否定される可能性もあります。

2006年に高濃度ビタミンC点滴療法で延命効果を認めた3例の進行がん患者を報告した研究グループが、高濃度ビタミンC点滴療法の効果と安全性を確かめる臨床試験を行なっています。用量を決める目的で行なったフェースI臨床試験の結果が報告されています。それによると、標準治療で効果が認められなくなった進行がん患者に体重1kg当たり0.4g, 0.6g, 0.9g, 1.5gのビタミンCを週に3回点滴しても、副作用はほとんど認められていませんでした。したがって、安全性は問題ないと言えます。ただ、この研究では明らかな抗腫瘍効果は認められなかったと報告されています(Annals of Oncology 2008年)。
他の治療との併用による相乗効果や、QOLの改善や延命効果などは、まだ否定されたわけではありませんが、高濃度ビタミンC点滴療法の有効性については今後の臨床試験の結果を待たなければなりません。

試してみる価値がある治療法ですが、点滴のため週に1〜2回通院する必要があり1ヶ月分の費用が10〜20万円程度かかることを理解した上でご検討下さい。
また、副作用はほとんど経験しませんが、点滴による感染症のリスクが全く無いわけではありません。

 
| ホーム院長紹介診療のご案内診療方針書籍案内お問い合わせ
COPYRIGHT (c) GINZA TOKYO Clinic, All rights reserved.