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ノスカピン:副作用の少ない内服できる微小管阻害剤
ノスカピン(Noscapine)はモルヒネと同じくけしの液汁(アヘン)に含まれる植物アルカロイド性の成分です。アヘンから単離された成分としてもっとも古いのがノスカピンで、1803年に単離されています。
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ケシの未熟果実に傷をつけて滲出する乳液を乾燥したものをアヘンと言い、その主成分は麻薬のモルヒネです。アヘンに含まれるアルカロイドでは、ノスカピンはモルヒネについで2番目に多く含まれています。
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ノスカピンには麻酔・鎮痛作用や依存性は無く、強い鎮咳作用があります。
ノスカピンは脳の咳中枢を抑制することによって鎮咳作用を示しますが、麻薬系の咳止め薬と異なり、呼吸を抑制することなく、また習慣性も無いので、『非麻薬性中枢性鎮咳剤』に分類されている医薬品です。咳止め(鎮咳薬)としては1950年代から多くの国で使用されています。
咳止めの龍角散や、総合感冒薬(パブロンゴールド、新ルルAゴールド、エスタック顆粒など)のような大衆薬にも含まれている極めて安全性の高い薬です。
咳止めとして使用される量より多い量のノスカピンを服用すると、抗がん作用があることが報告されています。1958年、米国の国立がん研究所( National Cancer Institute)における培養がん細胞を使った研究で、ノスカピンにがん細胞を殺す作用があることが発見されました。
1997年、米国アトランタのエモリー大学の研究者が、ノスカピンには細胞の分裂に重要な役割を果たす微小管の働きを阻害する効果があることを発見し、がん治療薬として再び注目を集めました。
細胞が分裂するときに微小管は重要な役割を担っているため、微小管の働きを阻害する薬が抗がん剤として極めて有効であることが知られていたからです。
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微小管は細胞骨格を形成する蛋白質であり, チューブリンというタンパク質が集まった管状構造をもっています。微小管は細胞分裂の時の染色体の移動に重要な役割を果たしています。したがって、微小管の働きを妨げる薬は、がん細胞の細胞分裂を阻害することによって抗がん作用を発揮します。
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細胞の微小管に作用する抗がん剤として、パクリタキセル(商品名タキソール)やドセタキセル(商品名タキソテール)などのタキサン製剤,ビノレルビン(商品名ナベルビン)などのビンカアルカロイド製剤があります。タキソールやナベルビンは注射薬ですが、ノスカピンは内服で効果が出るというメリットがあります。
エモリー大学の研究では、ヒトのがん細胞を移植した動物にノスカピンを投与すると、副作用がほとんど出ない量で、3週間で80%も腫瘍が縮小しました。
エモリー大学の研究結果は1998年に発表されましたが、さらにその後の研究では悪性リンパ腫や乳がん、大腸がん、白血病、グリオーマなどの他のがんでも有効性が確認されました。
この研究グループの報告によると、ノスカピンは腎臓や肝臓、心臓、骨髄などの臓器にダメージを与えない量で抗腫瘍作用を示すということです。さらに、免疫抑制作用も認められないと報告されています。血液脳関門を通過するので脳腫瘍にも効果があります。
人間における臨床試験でも、前立腺がんや肺がんなど多くのがんで有効性が示され、毒性が少ないことが報告されています。抗腫瘍効果はシスプラチンよりも高いという報告もあります。また、シスプラチンなど他の抗がん剤との併用で、抗がん作用を相乗的に高めるという報告もあります。
最近の研究では、ノスカピンには血管新生阻害作用があることが報告されています。がん細胞が低酸素になるとHIF-1αという転写因子が活性化され、この転写因子は血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の産生を高めます。VEGFは血管を作る増殖因子です。ノスカピンはHIF-1αの活性化を阻害してVEGFの産生を阻害し、血管新生を抑える作用があると報告されています。
また、ノスカピンはブラジキニンという炎症性伝達物質の産生を抑制する作用が報告されています。ブラジキニンは多くのがん細胞の増殖を促進する作用があるので、ブラジキニンの産生阻害作用も抗がん作用のメカニズムと関連していることが示唆されています。
さらに、転写因子のNF-κB活性を阻害する作用があることも報告されています。
このように、ノスカピンの抗がん作用には幾つかの作用メカニズムが働いているようです。その結果、副作用が極めて少ないのに、強い抗がん作用を示すのです。
米国で行われている臨床試験では、1日に1000〜2250mgを3回に分けて服用する投与法が使用されています。
注射や座薬での投与も研究されていますが、ノスカピンは内服で体内への吸収が非常に良いので、経口投与で十分だと考えられてます。注射よりも内服の方が使用しやすく安全性も高いと言えます。
動物における安全性試験では、ノスカピンは極めて毒性が低いことが報告されています。大量に服用した場合の副作用としては、吐き気、腹部不快感が数%程度の頻度で発生しています。
1961年に余命数日と診断された末期がん患者にノスカピンを投与した臨床試験がジョンズ・ホプキンス大学で行われていますが、1日3000mgの投与で80%の患者はなんら副作用が認められませんでした。
ノスカピンは1カプセル(200mg)が400円になります。病状や治療の状況に応じて、1日に3〜9カプセルを服用します。1ヶ月分が36000円〜108,000円と費用がやや高価です。しかし、副作用がほとんど無く、がん細胞の増殖を抑えることができます。
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セファランチン:副作用が極めて少なく安価な植物アルカロイド
セファランチン (cepharanthine) は、ツヅラフジ科の植物タマサキツヅラフジの根から抽出したアルカロイド、あるいはそれを含む医薬品です。医薬品としてのセファランチンには、セファランチン、イソテトランドリン、シクレアニン、ベルバミンが主な成分として含まれています。
セファランチンは、放射線による白血球減少症、円形脱毛症、粃糠性脱毛症、滲出性中耳炎、マムシ咬傷の治療薬として保険適用されています。保険適応されていませんが、口内炎にも効果があります。
医薬部外品としては、白薬子抽出エキスは毛母細胞の増殖を促進する作用があることから、育毛剤にも使用されています。
さらに、最近の研究で、がん細胞の増殖を抑制する効果やアポトーシスを誘導する作用、血管新生阻害作用など、がん治療における有効性が報告されています。
副作用は極めて少なく(副作用の発生率は1%以下で、主な副作用は食欲不振や胃部不快感や発疹など)、しかも安価であるため、がんの代替医療として、試してみる価値は高いと言えます。
セファランチンの抗がん作用として以下のような報告があります。
○ がん組織の血管新生を阻害してがんの増殖を抑制する。
○ 転写因子のNF-κBの活性を阻害することによってがん細胞の増殖を抑える。
○ 細胞周期を止めてアポトーシスを誘導する。
○ がん細胞の抗がん剤耐性獲得に関与するP糖蛋白の働きを阻害して抗がん剤の効き目を高める。
○ がん細胞の放射線感受性を高める。
○ 抗がん剤のTS-1と併用して抗腫瘍効果を高める。
その他、活性化したマクロファージの一酸化窒素合成酵素の活性を阻害して炎症を軽減する作用、発がん過程を促進する発がんプロモーター作用を抑制する作用、温熱療法の効果を高める作用、インターフェロンの抗腫瘍効果を増強する作用、フリーラジカル消去作用、抗ウイルス作用なども報告されています。
セファランチンは1錠が1mgです。1錠30円で処方しています。抗がん剤治療中の白血球減少・脱毛・口内炎の予防や回復促進、再発予防の目的では1日3〜6錠で効果が期待できます。したがって、通常は1日分が90〜180円、1ヶ月分が2700〜5400円になります。
アルカロイドによるアポトーシス誘導作用や血管新生阻害作用やNF-κB阻害作用は用量依存的であるため、がん組織を縮小させる目的では1日20〜60mgの大量投与も試してみる価値はあります。セファランチンは副作用が非常に少ないので、副作用の出現に注意しながら少しづつ量を増やしていけば問題はありません。費用も安価で、1日20mgを服用しても1ヶ月分が18,000円です。
微小管の働きを阻害する植物アルカロイドのノスカピンとの併用は相乗効果が期待できます。
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ジインドリルメタン(DIM-Pro):アブラナ科植物に含まれる抗がん成分
ジインドリルメタンは、ブロッコリーやケールなどのアブラナ科の植物や野菜に含まれるグルコブラシシン(Glucobrassicin)という成分が体内で変化して生成される物質です。
グルコブラシシンが加水分解してインドール-3-カルビノール(Indole-3-carbinol)になりますが、インドール-3-カルビノールは不安定で、胃の中の酸性の条件下ではインドール-3-カルビノールが2個重合したジインドリルメタン(3,3-diindolylmethane)になります(図)。
ジインドリルメタンは消化管から容易に吸収され、体中の臓器や組織に移行することが知られています。
ジインドリルメタンには、乳がんや前立腺癌や膵臓がんなど多くのがん細胞の増殖を抑え、細胞死(アポトーシス)を誘導すること、がん細胞の抗がん剤感受性を高める効果などが報告されています。
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グルコブラシシン
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インドール-3-カルビノール
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ジインドリルメタン
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多くのがん細胞では、セリンスレオニンリン酸化酵素のAktキナーゼや核内転写因子NF-κBが恒常的に活性化していることが多く、このようなAktやNF-κBの活性化が抗がん剤に対する抵抗性獲得の原因となっています。
培養細胞や動物を使った実験で、ジインドリルメタンは、Akt/NF-κBシグナル伝達系を阻害する作用によって、がん細胞の細胞死(アポトーシス)を誘導する作用、抗がん剤に対する感受性(抗がん剤が効きやすくなること)を高める効果が報告されています。
例えば、乳がん細胞に対するタキソールの効果、前立腺がん細胞の対するタキソテールの効果、膵臓がんに対する抗がん剤(シスプラチン、ジェムシタビン、オキサリプラチン)やタルセバ(erlotinib)の効果を高めることが報告されています。
さらに、NF-κBの活性を阻害することによって、NF-κBによって調節を受け、血管新生やがん細胞の浸潤や転移に関与しているVEGFやIL-8やMMP-9やuPAなどの遺伝子発現を抑え、がん細胞の増殖や転移を抑える効果も報告されています。
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がん細胞内でAkt/NF-κBシグナル伝達系が活性化されると、がん細胞の増殖、抗がん剤抵抗性、血管新生、浸潤・転移が促進される。
ジインドリルメタンは、がん細胞のAkt/NF-κBシグナル伝達系を抑制することによって、がん細胞の増殖を抑制し、抗がん剤感受性を高める効果を発揮する。 |
米国ではジンドリルメタンのサプリメントが販売されています。その中で消化管からの吸収効率が高くなるように製剤化したDIM-PRO 100が推奨されています。
DIM-PRO 100の1カプセル中には腸管からの吸収効率を高めたジインドリルメタン複合体が100mg(ジインドリルメタン自体は25mg)とビタミンC20mgが含まれています。
DIM-PRO 100は1日に4カプセルを食後(通常、朝と夕の食後に2カプセルづつ)に服用します。抗がん剤の抗腫瘍効果をさらに高めるために、1日6〜8カプセルに服用量を増やすと効果が高まります。
DIM-PRO 100は1個(120カプセル入り)が9,000円(税込み)ですので、1日4カプセル服用で1ヶ月分の費用が9,000円になります。 |
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キサントン-40:マンゴスチン果皮に含まれる抗がん成分
マンゴスチンはマレー半島を原産地とするオトギリソウ科樹木の果実です。
マンゴスチンの果実は、みかんくらいの大きさで、果皮は黒紫色で1cmくらいの厚さがあります。マンゴスチンの果皮は、東南アジア地域では古くから民間薬として、感染症(赤痢やマラリアや寄生虫など)、皮膚疾患(湿疹や傷の化膿など)、消化器疾患(下痢や消化不良など)、炎症性疾患など多くの病気の治療に利用されていました。それは、マンゴスチンの果実には、殺菌作用・解熱作用・抗炎症作用・抗酸化作用・滋養強壮作用などの薬効があるからです。
これらの効果は、マンゴスチンに多く含まれるキサントン(Xanthones)と言う成分の薬理作用によります。
キサントンはポリフェノールの一種で、マンゴスチンからは20種類以上のキサントンが見つかっています。
キサントンの基本構造 |
アルファ・マンゴスチンの化学構造 |
ガンマ・マンゴスチンの化学構造
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多くの基礎研究によって、キサントンには強力な抗酸化作用、COX-2阻害作用などの抗炎症作用、がん細胞にアポトーシス(細胞死)を誘導する作用、転写因子NF-κB活性の阻害作用、細胞増殖を促進するMAPキナーゼやAktキナーゼの阻害作用などが報告されています。キサントンには強力な抗菌作用があるので、感染症の予防にも効果が期待できます。キサントンにはがん細胞を攻撃するナチュラルキラー細胞の活性を高める効果も報告されています。
長い歴史の中で民間療法として人体での有効性が認められており、さらに、近年の多くの基礎研究の結果から、マンゴスチン果皮やキサントンは、炎症性疾患やがんの治療において有効であることが示されています。
培養がん細胞を使った実験で、α-マンゴスチンの抗がん活性(50%増殖抑制濃度)は5-FU(フルオロウラシル)と同じレベルであることが報告されています。
内服の5-FUの通常の投与量は1日200〜300mgです。したがって、キサントンを1日に400〜800mg(キサントン-40を10〜20錠)摂取することは、がんの治療において効果が十分に期待できると考えています。
この量のキサントンの服用では副作用は全く経験していません。
また、抗がん漢方薬やジインドリルメタンやアルテスネイトなど、抗がん作用をもった他の代替医療と併用すると、抗がん作用を増強することができます。
キサントン-40はマンゴスチン果皮エキス粉末(Xanomax 20%)を錠剤化したものです。1錠(250mg)中に40mgのキサントンを含みます。1日に10〜20錠の服用でキサントン400〜800mgが摂取できます。
1ヶ月分600錠(150グラム)で9000円(税込み)です。
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キサントン-40の詳細についてはこちらへ:
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シメチジン:抗がん作用のあるヒスタミンH2受容体拮抗薬
シメチジンはヒスタミンH2 受容体拮抗薬で、胃酸の分泌を抑える効果により胃炎や消化性潰瘍や逆流性食堂炎などの治療薬として使用されています。
1980 年代後半に デンマークのTonnesen らにより、シメチジンが胃がん患者に対し延命効果を示すことが報告され、その後、大腸がん、悪性黒色腫に対しても同様の効果を示すことが報告されています。
例えば、治癒切除術後5-FU(200mg/日)投与を受けている原発性大腸がん患者(シメチジン800mg/日併用群34例、非併用群30例の計64例)において、平均10.7年の観察期間での10年生存率は、シメチジン併用群で84.6%、シメチジン非併用群で49.8%でした(P<00001)。
たった7日間のシメチジン投与(手術前5日間と手術後2日間)で、大腸がん患者の3年後の死亡率を41%から7%に低下させたという報告もあります。
腎がんにおいても、進行例に対してインターフェロンα+シメチジンを併用した場合、インターフェロン単独よりも抗腫瘍効果が高いことが報告されています。
ヒスタミンにはがん細胞の増殖を促進する作用や、細胞性免疫を抑制するリンパ球(サプレッサーT細胞)を活性化することなどが報告されており、そのためシメチジンの延命効果は、がん細胞に対するヒスタミンの細胞増殖促進作用を阻害する機序や、がん細胞に対する免疫力を活性化させ る可能性などが指摘されています。さらに近年では、シメチジンが接着因子 E-セレクチンの発現を抑 制することによりがんの転移を抑制する抑える機序や、インターロイキン 12の発現上昇を介したナチュラルキラー細胞活性化、血管新生阻害作用によって腫瘍組織の増大を阻止する可能性、がん細胞にアポトーシス(細胞死)を誘導する作用など、新たなメカニズムも報告されています。
シメチジンは胃・十二指腸潰瘍や逆流性食道炎や急性胃炎などの治療において胃酸分泌を抑える目的では保険適応になりますが、がん治療の目的では保険適応されません。しかし、安価な薬ですので、自費診療でも使いやすい薬です。
当クリニックでは、1錠(200mg)を25円(税込み)で処方しています。1日服用量は4錠です。
1日分が100円、1ヶ月分が3000円です。
免疫増強・血管新生阻害・アポトーシス誘導・転移抑制などの抗腫瘍効果があり、臨床試験で再発予防や延命効果が証明されていますので、抗がん剤治療中や再発予防の目的で併用する価値は十分にあります。
手術後の免疫力低下を抑える効果も指摘されていますので、手術後早期の服用も有効です。 |
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アルテスネイト:抗マラリア薬の抗がん作用
抗がん生薬(がんを縮小させる効果をもつ生薬)の中にマラリアの治療に用いられているものがあります。中国の南方地方などではマラリアの治療に漢方薬が古くから使用されていました。このような漢方薬の中から抗がん物質も見つかっています。青蒿(セイコウ) という生薬は強力な解熱作用があり、マラリアの治療に古くから使用されていました。その解熱成分の アルテミシニン(artemisinin) とその誘導体(アルテスネイト、ジヒドロアルテミシニンなど)は マラリア の特効薬として薬品として使用されています。近年、このアルテミシニン誘導体が抗がん物質として注目を集めています。
アルテミシニン誘導体の一種 のArtesunate(アルテスネイト)の構造式は下図の右に示しています。この物質は分子の中に鉄イオンと反応してフリーラジカルを産生するendoperoxide bridge を持っています。
がん細胞はトランスフェリンレセプターを介したメカニズムで鉄を多く取り込んでいます。がん細胞内には鉄イオンが多く含まれ、アルテスネイトは鉄イオンと反応してフリーラジカルを発生するため、がん細胞が選択的に障害を受けることになります。正常細胞は鉄をあまり含んでいませんのでがん細胞に比較的特異的に細胞障害作用を示します。さらに、がん細胞はSODやカタラーゼやグルタチオン・ペルオキシダーゼといった抗酸化酵素の量が正常細胞と比べて非常に少ないので、アルテスネイトによる細胞傷害作用を受けやすくなります。
アルテスネイトは様々ながん細胞に対して抗腫瘍効果を示すことが報告されています。培養細胞や動物を使った実験では、白血病、大腸がん、肺がん、悪性黒色腫、肝臓がん、卵巣がん、骨髄腫、膵臓がんなどに対する抗腫瘍作用が報告されています。
臨床例での有効性を認めた症例報告もあります。例えば、進行した悪性黒色腫に著効した症例報告や、進行した非小細胞性肺がんの抗がん剤治療にアルテスネイトを併用すると抗腫瘍効果が高まることを示したランダム化比較試験の報告などがあります。(詳しくはこちらへ)
抗腫瘍作用のメカニズムに関しては、上記の如く、がん細胞内でフリーラジカルの産生を増やし、酸化ストレスを高めて、がん細胞に細胞死(アポトーシスや壊死)を引き起こすのが基本です。さらに、腫瘍組織の血管新生を阻害する作用、細胞外の結合組織を分解する酵素の活性を阻害することによってがん細胞の転移と浸潤を抑制する作用、トポイソメラーゼIIα阻害作用や細胞内シグナル伝達系に作用してアポトーシスを誘導する作用など、多彩な抗がん作用が報告されています。
青蒿(セイコウ:Artemisia annua)から分離された活性成分が アルテミシニンで、その効果を高めたアルテスネイト(Artesunate)とアルテメーター(Artemether)という2種類の誘導体が合成されています。
アルテスネイトは水溶性で、抗マラリアや抗がん作用はアルテミシン誘導体の中で最も高いと考えられています。毒性が極めて低いので、副作用がほとんど無いのが特徴です。しかし、体内での半減期が比較的短いという短所もあります。
アルテメーターは脂溶性で、アルテスネトより体内の半減期は長く、血液脳関門を容易に通過するので、脳マラリアや脳腫瘍にも効果があります。しかし、高用量を使用すると神経毒性という副作用があります。
アルテミシニンは、アルテスネイトとアルテメーターの2つの中間的な半減期をもち、血液脳関門も通過します。
Artesunate tablets(1錠50mg)は中国のGuilin Pharmaceutical Co. Ltd社製で抗マラリア薬として使用されています。1錠(50mg)が200円です。
通常、1日100mgを服用します(1ヶ月分:12000円)
Artemixは米国のサプリメントで1カプセル中にアルテミシニン誘導体のArtesunate 50 mg, Artemether 40 mg, Artemisinin 50 mgを含みます。がんの代替医療で使用されています。Artemixはこの3種類のアルテミシニン誘導体を含有するので、その相乗効果が期待できます。(1ヶ月分30カプセル:12000円)
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アルテスネイト(50mg)
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Artemix(30カプセル)
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アルテスネイトの詳細については こちらへ:
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