|
|
|
|
|
|
『がんの治療と検査による放射線被曝』
による発がんリスクを軽減する治療法
|
【がん治療後に発生する2次がんとは】
がんの治療時に受けた抗がん剤や放射線照射が、新しい悪性腫瘍を発症する原因となる可能性があります。ある種の抗がん剤や放射線は正常細胞の遺伝子に変異を起こしてがんを発生させる原因となるからです。がん治療が原因となって発生したがんを『2次がん』と呼んでいます。最近は、CT検査やPET検査など放射線被曝量が多い検査も多く行われるため、放射線検査によるがんの発生も問題になっています。
ここでは、抗がん剤による2次がんは省いて、放射線治療と放射線検査によるがんの発生リスクを説明します。放射線を使った検査(CTなど)や放射線治療は、がんの診断と治療において必要な場合は受けるメリットがあります。しかし、放射線は遺伝子に変異を引き起こしてがんの原因になることは良く知られているため、がんの治療で放射線治療を受けた時や、治療前後にCT検査など放射線被曝量の多い検査を頻回に受けていると、放射線被曝による免疫力の低下や新たながんの発生(2次がん)が心配になってきます。
|
図:放射線は、骨髄や免疫組織などにダメージを与えて免疫力や造血機能を低下させる。さらに、正常細胞の遺伝子(DNA)に変異を引き起こし、新しいがんを誘発する可能性もある。 |
【放射線治療による2次がん】
子宮頸がんで放射線治療を受けた患者では、放射線が当たった部位(直腸、肛門、膀胱、卵巣、膣、外陰部など)の発がん率が一般集団と比較して、放射線の量と経過期間に比例して上昇することが確かめられています。例えば、3Gy以上の照射を受けた患者では平均で約1.5倍の発がん率の上昇が認められています。これは1年間に1万人あたりがんの発症が12人多くなるという程度ですのでそれほど大きい数字ではありません。しかし、放射線治療後の経過期間が長くなるほど発がん率が上昇し、40年以上経過した人では照射を受けた部位によって3から9倍くらいの発がん率の上昇が認められています。(JNCI 99:1634-1643, 2007)
乳房、甲状腺、肺は放射線の発がん効果に対して感受性が高いことが知られています。ホジキンリンパ腫の治療で胸部の放射線照射を受けた女性患者では乳がんの発症率が高く、30歳もしくはそれ以前に治療を受けた女性のリスクが著しく高いことが報告されています。若い人ほど乳腺の放射線感受性が高いからです。
乳がんに対する最初の放射線療法後、肺と食道におけるがんや肉腫のリスクが増やすことや、子宮頸がんに対する高線量の放射線治療でも照射を受けた組織のがんや肉腫の発生率が高まることが報告されています。成長過程の小児の組織は放射線による発がん率が高く、小児期に頭蓋照射を受けると脳腫瘍の発生率が高くなることが報告されています。
放射線による固形がんは、放射線被曝から10年以上経過してから発生することが多いので、大量の放射線被曝を受けた人は、照射を受けた部位を主体に長期に及ぶ監視が必要です。しかし、検査による放射線被爆も発がんのリスクを高めるので、CTなどエックス線を使った検査は必要最小限にすることも大切です。日本ではがんの3%ほどがエックス線検査により発生しているという推計が英国の研究者から報告されていますので無視できません。(後述)
|
【CT検査による放射線被曝量と発がんリスク】
人体への影響を考慮した放射線被曝量の単位としてシーベルトが使われます。数値が大きいほど人体への害が大きくなります。1ミリシーベルトは1000マイクロシーベルトです。
宇宙線や地球からの放射線によって、普通の生活を行っていても、世界平均で1年間に一人当たり2.4ミリシーベルト(2400マイクロシーベルト)の放射線(自然放射線)を浴びていると言われています。日本ではラドンなど気体の放射線物質が少ないので年間約1500マイクロシーベルト、ブラジルやイランでは地域によっては年間1万〜2万マイクロシーベルト(10〜20ミリシベルト)の自然放射線を浴びている所もあるそうです。
高い所にいくと宇宙線を浴びやすいので、東京とニューヨークを飛行機で往復するだけで200マイクロシーベルトを被曝します。
病院で放射線治療にあたる技師の年間被曝上限は50ミリシーベルトで、放射線影響協会によると、200ミリシーベルト以下では人体への影響が臨床例でほとんど報告されていない、がんになる確率はほとんど増えないと言っています。
CTスキャンなどレントゲンを使った検査は、医療上のメリットが放射線被曝のデメリットに勝っている場合に使用されます。 |
|
図:CT検査は放射線被曝量が高いので頻回の検査は新たながんの発生リスクを高める。がん生存者にとっては不要なX線検査を避けると同時に、放射線被曝の害を軽減するための対策(漢方治療や抗酸化性サプリメント)も必要である。 |
胸部X線撮影で50マイクロシーベルト、胃のレントゲン撮影(バリウムを飲む上部消化管撮影)で1回4000マイクロシーベルト(600マイクロシーベルトという記載もある)、胸部CTは1回で4.6〜10.8ミリシーベルト、腹部CTは1回6.7〜13.3ミリシーベルトという報告があります。
CTは撮影する部位や機械によって異なりますが、概ね1回で5〜15ミリシーベルト(5000〜15000マイクロシーベルト)、がんの検査では胸部と腹部両方を検査することが多いので、この場合だと1回で20ミリシーベルト(20000マイクロシーベルト)を超えることもあります。Wikipediaの解説では胃のレントゲン検査は1回4ミリシーベルト、CT検査1回で7〜20ミリシーベルトとなっています。
国際放射線防護委員会が勧告している被ばくの上限値(自然放射線を除いた数値)は、一般公衆の線量限度は1年間に1000マイクロシーベルト(1ミリシーベルト)で、放射線に関連する業務に従事する人は5年間の平均が1年間に20000マイクロシーベルト(20ミリシーベルト)となっており、ある年に20000マイクロシーベルトを超えても他の年に下回っていて5年間の平均で20000マイクロシーベルト/年を超えなければよいという勧告になっています。
CTよりもずっと放射線量の低い胸部レントゲン(50マイクロシーベルト)でも、定期健診などで「妊婦や妊娠している可能性のある方は受けないように」という注意が促されます。
したがって、CT検査で浴びる放射線量(1回で10〜20ミリシーベルト)というのは、年に2〜3回程度であれば、それほど問題ありませんが、頻回に受ければ、安易に無視できるレベルでは無いと言えます。
【CT検査による放射線被曝とがんの発生リスク】
一般的には、100ミリシーベルト以上の蓄積でなければ発がんのリスクは上がらないと考えられています。危険が高まると言っても、100ミリシーベルトの蓄積で0.5%程度という記述もあります。人間は一生の間に約50%の確率でがんを発症しますので、それが50.5%になる程度だからほとんど無視できるという解説もあります。
短期間に数百ミリシーベルトを被爆するとがんの発生率は高くなりますが、同じ量の被爆でも数年かかる場合には、発がんリスクはほとんど上がらないと考えられています。放射線でダメージ(変異)を受けたDHAが修復するからです。
しかしそのような推測とは別に、通常のエックス線検査ががんの発生を高める事実が複数の疫学研究で明らかになっています。
例えば、2004年の英国からの論文(Lancet 363:345-351, 2004)では、「英国を含む15カ国を調査対象に、各国のエックス線検査の頻度、放射線被ばく量と発がんの危険性などのデータから75歳までにがんを発症する人の数を推定したところ、日本では年間発症するがんの3.2%が医療機関でのエックス線検査(CT検査を含む)による被ばくに起因すると見られ、他の14カ国における割合(0.6-1.8%)と比べて突出して高くなっている」と報告されています。
発がんの原因としてタバコと食事がそれぞれ30〜35%を占めていますので、放射線による発がんへの寄与が2〜3%程度というのは、がんの原因としては低いことは確かです。しかし、年間一人当たりの自然放射線量は日本では1.5〜2ミリシーベルトくらいですが、日本国民一人当たりの医療被曝(エックス線検査など)は1年間の平均で2〜3ミリシーベルトと言われており、自然放射線量よりも医療被曝の方が多いことが問題視されています。
また、米国では2007年に7200万件のCT検査が実施され、これらの検査による放射線被曝によって将来約29000例のがんが発生する(このうち約半分ががんで死亡)という推計が報告されています。これは米国のがん罹患数(2008年)140万例の約2%に相当します。CT検査の部位によるがん発生数の内訳は、腹部と骨盤部からが14,000例で最も多く、胸部からが4,100例、頭部からが4,000例、胸部CT血管造影からが2,700例などです。また、臓器によるがん発生数の内訳は、肺が6,200例で最も多く、結腸が3,500例、白血病が2,800例などと推計されました。 (Arch Intern Med, 169:2071-7, 2009)
この論文の考察の中には、1回のCTスキャンで10ミリシーベルトの被曝を受け、被曝によるがん死亡は2000回のCTスキャン当たり1例になるという推計が記載されています。この割合だと、20回のCT検査を受けても、放射線被爆に起因するがんが発生して死亡する確率は1%増える程度という計算になります。
普通の生活をして一生の間にがんで死亡する確率が30〜40%程度ですので、20回のCT検査を受けると30%の確率が31%になる程度なので、それほど大きな数字とは言えません。
したがって、CT検査の放射線被曝による個人レベルの発がんリスクは小さいという意見は間違ってはいないのかもしれません。しかし、多数のCT検査が行なわれれば、集団レベルでの発がんリスクは無視できない大きさになる(全体のがんの2%)と言えます。少なくとも、日本や米国では、発生したがんの2〜3%がエックス線検査に依るものであるのは確かなようです。
米国からの論文では、心筋梗塞の患者は検査や治療(心臓カテーテル検査など)で一人1年に平均5.3ミリシーベルトの医療被曝を受けており、その被曝によるがん発生への影響を計算すると、10ミリシーベルト当たり5年間の追跡でがんの発生率が3%上昇するという推計が報告されています。(CMAJ, March 8, 2011, 183(4))
CT検査も回数が増えれば、個人単位でも無視はできない発がんリスクとなります。
ちなみに、タバコを1日20本吸っている人はCTを毎週1回受けている以上の発がんリスクになると思います。したがって、タバコを吸っている人は、CT検査の被曝のリスクはタバコのリスクに比べればほとんど無視できます。放射線被曝を心配するよりタバコを止める方が先です。
また、CT検査が多く行われる理由の一つに、病気の見逃しによる訴訟を恐れるために、医療機関が過剰に検査している、あるいは患者側が検査を要求しているという事情もあるようです。がんの検査においては、放射線を使わない検査(MRI, エコー、腫瘍マーカー検査など)を活用しながら、不必要で過剰な放射線検査は行わない努力が、2次がんの発生予防の目的でも必要です。
|
【放射線被曝が発がんリスクを高める理由】
放射線被曝による発がんを防ぐためには、まず、放射線被曝ががんを発生させる理由を理解する必要があります。放射線による発がんのメカニズムを簡単に説明します。
そこでまず、「フリーラジカルとは何か?」ということを理解する必要があります。
この世の全ての物質は全て原子からできています。原子というのは物質を構成する最小の単位で、原子核を中心にその周りを電気的に負(マイナス)に帯電した電子が回っているという形で現されます。通常、電子は一つの軌道に2個づつ対をなして収容されますが、原子の種類によっては一つの軌道に電子が一個しか存在しないことがあります。このような「不対電子」を持つ原子または分子をフリーラジカル(遊離活性基)と定義しています。フリーは英語で「自由な」、ラジカルは「過激な」という意味で、フリーラジカルは自由な過激分子ということになります。
本来、電子は軌道で対をなっている時がエネルギー的に最も安定した状態になります。そのためにフリーラジカルは一般的には不安定で、他の分子から電子を取って自分は安定になろうとします。フリーラジカルとは、「不対電子をもっているために、他の分子から電子を奪い取る力が高まっている原子や分子」と定義できます。
不対電子をもった分子は不安定で、他の分子から電子を奪い取って安定化しようとします。「酸化」するというのは活性酸素やフリーラジカルが、ある物質の持っている電子を奪い取ることを意味します。つまり、活性酸素やフリーラジカルは、相手の電子を奪う(酸化する)性質が非常に強い性質のものです。
がんの放射線治療において、放射線照射ががん細胞を死滅させるのは、放射線が細胞内の水と反応してヒドロキシラジカルという活性酸素を産生するからです。ヒドロキシラジカルは不対電子をもったフリーラジカルで生体の分子を酸化し、細胞や遺伝子を損傷します。このような細胞を死滅させる効果ががんの放射線治療で利用されているのです。
CT検査などの低濃度の放射線被爆でも、その放射線量に比例して、フリーラジカルによるダメージを受けることになります。放射線治療のように細胞を死滅させるような強い効果はありませんが、遺伝子(DNA)の変異や蛋白質や脂質の酸化を引き起こして、組織や細胞に酸化障害を与えます。これが放射線障害です。
|
図:フリーラジカルは不対電子をもっているから不安定。他の分子から電子を奪って安定しようとする。
例えば、水分子(H2O)に放射線が当たって水素(H)とヒドロキシルラジカル(・OH)に分かれると、ヒドロキシルラジカルは不対電子を持つため、不安定になって、他の分子から電子を奪い取ろうと暴れ、細胞内外の物質(DNA, 蛋白質,脂質など)を酸化することによって細胞を傷害する。DNAの酸化傷害によって遺伝子変異が起こるとがんの発生の原因となる。 |
|
【放射線被曝による発がんリスクを低減する漢方治療とサプリメント】
がんの一次予防では、食事だけで発がんのリスクを30%くらいに減らすことができます。がんの再発予防でも、野菜や果物や豆類を多く摂取する食事で、再発を半分近く減らせる結果も報告されています(効果が無いという報告もあります)。頻回のCT検査で発がんリスクが数%上昇しても、がん予防の方法を実践すれば、そのリスクをほとんど減らすことは可能です。
放射線の生物作用を抑制する薬剤を放射線防護剤(radioprotector)といいます。
前述のごとく、放射線は細胞内の水と反応してヒドロキシラジカルという活性酸素を発生します。このヒドロキシラジカルは反応性に富むフリーラジカルであるため、遺伝子(DNA)と反応して遺伝子変異を引き起こし、この遺伝子変異によってがん細胞が発生します。
したがって、ヒドロキシラジカルを直接消去する抗酸化剤や、フリーラジカルを消去する細胞内の抗酸化酵素(SOD,カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼなど)の産生を高めるものが放射線防御剤となります。細胞や組織の抗酸化力を高めることが、放射線による遺伝子変異を防ぐ最も重要な対策です。
フリーラジカルを消去する抗酸化剤としては、ビタミンCやアルファリポ酸、コエンザイムQ10などがあります。また、漢方薬に含まれるポリフェノール(フラボノイドなど)も放射線による遺伝子変異を防ぐ効果があります。
アルファリポ酸は体内にある補酵素で、強力な抗酸化物質です。アルファリポ酸が放射線障害から組織や臓器を保護する効果が動物実験などで確かめられています。チェルノブイリ原発事故でも汚染地区に住んでいた子供にアルファリポ酸を1 日 200〜400mg の経口投与 が行われ、白血球機能の正常化や、腎臓や肝臓機能の改善が報告されています。
抗酸化酵素の産生を高めるサプリメントとしてはセレンが有効です。
(アルファリポ酸とセレンのサプリメントについてはこちらへ)
放射線障害からの保護作用が報告されている生薬の代表は高麗人参です。高麗人参はストレスに対する抵抗力を高めるアダプトゲンの代表で、含まれる人参サポニンのジンセノサイドには、抗酸化作用や免疫増強作用があります。免疫増強作用は発がん予防に有効です。
致死量に近い量の放射線をマウスやラットに照射する実験で、高麗人参を照射前や照射直後に服用させると、生存率を著明に高める結果が多数報告されています。
抗酸化作用と免疫増強作用があるチャーガ(カバノアナタケ)も放射線障害の予防に有効です。
がんの放射線治療の副作用軽減に有効な漢方薬(十全大補湯など)が知られています。このような漢方薬を基本にしながら、抗酸化力や免疫力を高める生薬(霊芝、チャーガ、冬虫夏草など)やサプリメント(ビタミンC,アルファリポ酸、コエンザイムQ10、セレンなど)などを併用すると、CT検査などによる放射線被曝に伴う発がんリスクの増加を抑えることができます。
一種類の抗酸化サプリメントを摂取するのでなく、複数の抗酸化サプリメントや漢方薬を併用することで放射線障害に対する保護作用を増強することができます。例えば、高麗人参、黄耆、当帰、チャーガ、霊芝、冬虫夏草などを組み合わせた漢方薬、抗酸化性サプリメント(アルファリポ酸、コエンザイムQ10、ビタミンC、セレンなど)、放射線治療の副作用軽減効果が報告されているメラトニン、セフェランチンなどの併用は放射線治療や頻回のCT検査などによる2次がんの発生予防に有効だと言えます。
検査することによってがんの早期発見につながれば、がんによる死亡数を減らすことができます。がん治療後も再発を見つけて早めに治療するためには定期的なCT検査はメリットがあります。このようなメリットが、放射線被曝によるがん発生率の上昇というデメリット(危険性や害)に勝る場合は、CT検査は受ける方が良いと言えます。しかし、放射線を使わない検査(MRIやエコーや腫瘍マーカー検査)をうまく活用しながら、CT検査を減らす努力も必要かもしれません。そして、必要なCT検査のデメリット(発がんリスクの上昇)を予防するために、野菜や果物などの抗酸化作用の豊富な植物性の食事を増やし、場合によっては、抗酸化力や免疫力を高め、がん予防効果のある漢方薬やサプリメントの利用は有効だと思います。
放射線による発がんリスクの軽減に有効なサプリメントとして銀座東京クリニックでは以下のような製品を推奨しています。
処方をご希望の方は、電話(03-5550-3552)かメール(info@f-gtc.or.jp)でお問い合わせ下さい。
|
|
|
|
|